50代になると、定年後の暮らしに想いを馳せるという人は多いのではないでしょうか。
定年後に自分らしく豊かな時間を過ごすために必要なのは、毎日を予定で埋め尽くすことではありません。
「来週はあの展覧会に行こう」
「暖かくなったら、あの山を歩いてみよう」
そんな自分から楽しみにできる予定を、カレンダーに一つずつ増やしていくこと。
美術館、街歩き、低山ハイク、歴史探訪。
60代から始められることは、思っている以上にたくさんあります。
そして、その楽しみを誰かと共有したくなったら。
同じものを「面白いね」と言ってくれる人を探してみるのも、これからの時間を楽しむ一つの方法です。
カレンダーから「仕事」がなくなったら、何を入れよう
長く働いてきた人のカレンダーには、たくさんの予定が入っています。
月曜は会議。
水曜は取引先へ。
金曜までに資料を提出。
来週は出張。
そこに自分の意思とは関係なく、次々と予定が入ってきます。
ところが定年を迎えると、その予定が少しずつ減っていきます。
これは決して、悪いことではありません。
むしろ、
これからは自分で予定を選べるようになった
とも考えられます。
来週の水曜日は、美術館へ行く。
土曜日は、昔から気になっていた街を歩いてみる。
来月は、紅葉を見ながら低い山を歩いてみる。
予定は「やらなければならないこと」だけではありません。
「早くその日にならないかな」と思える予定も、カレンダーに入れていい。
定年後は、それを自分で決められる時間でもあります。
60代になってから「知りたい」が増えてもいい
「今さら勉強してどうするの?」
そんな言葉を耳にすることがあります。
でも、大人になってからの学びには、試験も成績表もありません。
覚えられなくてもいい。
途中でやめてもいい。
役に立たなくてもいい。
「面白いから知りたい」
それだけで十分です。
実際、65歳以上でもさまざまな学習活動に参加している人がいます。
芸術や文化。
歴史などの人文・社会・自然科学。
料理。
パソコン。
語学。
若い頃の勉強には、
「仕事に役立てる」
「資格を取る」
という目的があったかもしれません。
でも60代からは、
自分が面白いと思うから学ぶ。
そんな知的好奇心を楽しめます。
① 美術館巡り|「よく分からない」から始めていい
「美術館は詳しい人が行くところ」
と思っていませんか。
そんなことはありません。
作者を知らなくてもいい。
美術史を知らなくてもいい。
作品の価値が分からなくてもいい。
まずは、
「この絵、好きだな」
「これはちょっと分からないな」
で十分です。
展覧会を一つ見れば、
「この画家はどんな人生だったんだろう」
「この時代の日本はどうなっていたんだろう」
と、新しい疑問が生まれます。
帰りに図録を眺めてもいい。
近くの喫茶店で余韻を楽しんでもいい。
そして誰かと一緒なら、
「どれが一番好きだった?」
と話してみる。
同じ作品を見ても、感想は案外違います。
その違いが、面白いのです。
② 街歩き|いつもの駅で、一駅前に降りてみる
趣味を始めるからといって、高価な道具をそろえる必要はありません。
たとえば、街歩き。
いつも電車で通過している駅で降りてみる。
古い商店街を歩く。
神社を見つける。
路地裏の喫茶店に入る。
古い建物の案内板を読む。
「この道、昔は何だったんだろう」
と思ったら、帰ってから調べてみる。
それだけで、一つの趣味になります。
街歩きの面白いところは、
知れば知るほど、いつもの景色が違って見えること。
旅行に行かなくても、自宅から30分のところに知らない場所は案外あります。
③ 低山ハイク|「頂上を目指さない」楽しみ方もある
山歩きというと、
重いリュック。
険しい登山道。
何時間もかけて山頂を目指す。
そんなイメージがあるかもしれません。
でも、山の楽しみ方はそれだけではありません。
比較的歩きやすいコースを選び、
景色を見ながらゆっくり歩く。
途中で休憩する。
写真を撮る。
無理をせず戻る。
それでも十分です。
大切なのは、年齢や体力、健康状態に合ったコースを選び、天候や装備を確認すること。
必要に応じて経験者や専門家の情報も参考にしましょう。
「登頂しなければ意味がない」
と考える必要はありません。
外を歩いて、知らない景色を見る。
それ自体を楽しめます。
④ 歴史探訪|学生時代より、今のほうが面白いかもしれない
学生時代、歴史が苦手だった人もいるでしょう。
年号を覚える。
人物名を覚える。
テストに出る。
それが歴史だと思っていたかもしれません。
でも、大人になってから触れる歴史は少し違います。
昔住んでいた街。
旅行した場所。
ニュースで見た土地。
自分が知っている「場所」と歴史がつながるからです。
たとえば、
「この城跡は、なぜここにあるんだろう」
から始める。
少し調べる。
現地へ行く。
資料館を見る。
そこでまた知らない人物が出てくる。
今度は、その人について調べる。
一つの疑問から、次の疑問へ。
知的好奇心には、終わりがありません。
趣味は「一人で始めて、誰かと共有する」でもいい
新しい趣味を始めるとき、
「一緒に行く人がいないから」
と諦めてしまうことがあります。
でも、最初から仲間を用意する必要はありません。
一人で美術館へ行ってみる。
一人で街を歩いてみる。
近所の史跡を見に行ってみる。
面白かったら、その話を誰かにしてみる。
「この前、○○美術館に行ったんですよ」
「へえ、私も美術館好きです」
そこから、
「今度、この展覧会行きませんか?」
となるかもしれません。
つまり、
趣味を始めてから、仲間を探してもいい。
順番は自由です。
「同じ趣味」より、「面白がってくれる人」
パートナーや友人を探すとき、
「趣味が同じ人がいい」
と考えることがあります。
もちろん、同じ趣味なら話は合いやすいでしょう。
でも、すべての趣味が一致する必要はありません。
あなたは歴史が好き。
相手はそれほど詳しくない。
それでも、
「それ、面白そう。今度連れていって」
と言ってくれる。
反対に相手が、
「陶芸を見に行きたい」
と言ったら、
「詳しくないけど行ってみようかな」
と思える。
そんな関係も素敵です。
大切なのは、
「同じものが好き」だけではなく、「あなたが好きなものを面白がれる」こと。
これは、趣味仲間だけでなく、大人のパートナーシップでも大切な相性かもしれません。
一緒に出かけると、その人の「人柄」が少し見えてくる
プロフィールだけでは分からないことがあります。
たとえば美術館へ行ったとき。
自分のペースだけでどんどん先へ行く人なのか。
こちらがゆっくり見ていたら待ってくれる人なのか。
街歩きで道に迷ったとき。
イライラする人なのか。
「まあ、それも面白いね」と笑える人なのか。
低山ハイクで少し疲れたとき。
「もう少しだから」と急かす人なのか。
「休もうか」と言える人なのか。
趣味を一緒に楽しむ時間には、
会話だけでは分からない相手の人柄が見えることがあります。
「趣味が同じ」以上に、こうした時間の過ごし方が合うかどうかも大切です。
カレンダーに「誰かとの予定」が一つある
予定がたくさん入っていれば、充実している。
そういうことでもありません。
毎日外出する必要はありません。
家で本を読む日があっていい。
何もしない日もあっていい。
ただ、
来週の木曜日。
「○○さんと展覧会」
という予定が一つある。
再来週には、
「一緒に古い町並みを歩く」
という予定がある。
その予定を見るたび、
「ちょっと楽しみだな」
と思える。
カレンダーに必要なのは、予定の数ではなく、楽しみにできる予定なのかもしれません。
データから見る、60代以降の「学び」と社会参加
60代以降になっても、新しいことを学んだり、人と関わったりする人は珍しくありません。
内閣府「令和8年版高齢社会白書」に掲載されたデータでは、65歳以上の28.4%が何らかの学習活動に参加しています。
内容を見ると、
- 家政・家事……12.0%
- 芸術・文化……10.6%
- パソコンなどの情報処理……10.4%
- 人文・社会・自然科学……6.3%
- 英語……4.2%
などとなっています。
また、直近1年間に何らかの社会活動へ参加した65歳以上の人では、84.6%が生きがいを「十分感じている」または「多少感じている」と回答しています。
活動に参加すれば必ず生きがいが生まれる、という因果関係を示した数字ではありません。
それでも、
60代以降も「知りたい」「やってみたい」「人と関わりたい」と行動している人がいる
ことは分かります。
60代から、新しい仲間を探してもいい
若い頃の友人。
職場の同僚。
昔からの近所付き合い。
そうした関係は大切です。
でも、
「これから新しい人間関係をつくってはいけない」
という決まりはありません。
むしろ、新しい趣味を始めたからこそ、
今までとは違う人と話してみたくなることがあります。
美術館が好きな人。
歴史が好きな人。
散歩が好きな人。
温泉が好きな人。
カメラが好きな人。
「今度ここへ行ってみたい」
と話したとき、
「それ、面白そうですね」
と返してくれる人。
そんな人との出会いを探してみてもいいのです。
恋人を探す前に、「一緒に楽しめる人」を探してみる
マッチングサービスというと、
「結婚相手を探す場所」
「恋人を探す場所」
と思う人もいるでしょう。
もちろん、それも使い方の一つです。
でも、大人になってからの出会いは、もう少し柔らかく考えてもいいのではないでしょうか。
プロフィールを見て、
「この人も美術館が好きなんだ」
「歴史好きなら話してみたい」
「散歩が好きなら、休日の過ごし方が合いそう」
と思う。
まずはメッセージをする。
趣味について話してみる。
そして、
「この人とだったら、一緒に出かけてみたいな」
と思えたら、次の一歩を考える。
最初から、
「恋愛できるか」
「結婚できるか」
まで決める必要はありません。
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一緒に旅行へ行きたい。
趣味について話したい。
気になるお店へ行ってみたい。
知らない街を一緒に歩いてみたい。
そんな出会いも、人と人との大切な縁です。
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「恋人をつくらなければ」
と最初から構えなくても大丈夫です。
まず、
「自分が好きなことを、一緒に面白がってくれる人はいるかな」
という気持ちで相手を見てみる。
そこから始まる関係もあります。
まとめ|「来月、何しよう」が楽しみになる60代へ
定年後。
カレンダーから仕事の予定が減っていく。
でも、それは、
人生から予定がなくなるということではありません。
むしろ、これからは自分で選べます。
来週は、美術館へ。
再来週は、知らない街へ。
来月は、少し遠くの史跡へ。
春になったら、歩いてみたかった山へ。
一人で行ってもいい。
誰かと行ってもいい。
そして、
「ここ、面白かったよ」
と話したとき、
「私も行ってみたい」
と言ってくれる人がいたら。
次のカレンダーには、
「二人で行く予定」
を書き込めるかもしれません。
60代からの知的好奇心に、遅すぎるということはありません。
まずは来月のカレンダーに、一つだけ。
「自分が楽しみにできる予定」
を書き込むところから始めてみませんか。
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